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大人のブログ探訪

『リキュール小話』

2009/07/09

『リキュール小話』

 酒好きであっても、リキュールを積極的に楽しんでいる人は少ないのではなかろうか。リキュールとは、蒸留酒に薬草や果物の成分を加えて作るお酒のこと。カンパリなどは多くの人が知っているだろうが、その魅力はあまり知られていないことと思う。今回ご紹介する『リキュール小話』は、そんなリキュールにスポットを当てたブログだ。

 「リキュールのいちばんの魅力は、味わい、香り、色、製法、効能などがとても多彩なところでしょうね。大きく分類しても、薬草系・果実系・種子系・特殊系と4つに分かれ、その中にも様々な種類のものがあります」

 このようにリキュールの魅力を語るのは、このブログの作者であるChunさんだ。彼がリキュールの魅力を伝えようと思ったのには、日本人のお酒に対する嗜好がパターン化しているのではないかと思ったことがあるようだ。

 「日本人は洋食を食べる際、食前酒はビールかシャンパン、食後酒はほとんど飲まないというケースが多い。リキュールの世界を知れば、食前酒に薬草系リキュールのソーダ割りでリフレッシュし、食後酒は種子系のリキュールで締めるなど、食事の楽しみ方のバリエーションをいろいろ増やせます」

 確かに個人的にもよく思うが、日本人はどこでもビールを飲み過ぎのように思う。もちろんビールは美味しいけど、食事や体調、時間帯などに応じていろんなお酒を選択したほうが、充実度は明らかに高い。Chunさんは、バーで飲むときにも、リキュールを知っていれば、お酒の楽しみ方がぐっと増すという。

 「バーに行った際に、自分の知っているウイスキーの水割りやスタンダードカクテルを飲み続けることに飽きている人もいると思います。そんなとき、自分の好きなリキュールをいくつか覚えておけば、『このリキュールを使って何かカクテルを作ってください』などとオーダーもしやすくなりますよ」

 このようにリキュールの効能を聞くと、「飲んでみたいな」と思う人もいることだろう。ではさっそくブログ内の記事を見ながら、その魅力を改めて感じていきたいと思う。

シャルトリューズは僕が大好きなリキュールの一つで、この他の記事でもたくさん触れてきた。日本での知名度は低いが、フレンチレストランに行った際の食前酒などで友人に勧めると、最初はその独特な味わいに驚く人も多いが、大多数の人はシャルトリューズの美味にはまっていく。
《中略》
この記念ボトルは、シャルトリューズ修道院創設者、聖プルーノ帰天900年を記念して2001年にリリースされたものだ。ヴェールとジョーヌの色彩がうまく融合する様に薬草の調・配合がなされおり、昔は今のように厳密にジョーヌとヴェールが分化していなかったらしい。ねっとりとした甘みの中にハーブの香りがしっかりとしており、芳醇な味わいを醸し出している。アルコール度数は47度。発売されてから時間が経つので最近は徐々に見かけなくなりつつある。

(2008年05月25日のエントリー「色々な種類のシャルトリューズ1」より)

 こちらはシャルトリューズというリキュールについての記事。ここでは、よく見かける定番のラインナップ以外の珍しいものについても詳しく解説されている。

シャルトリューズには、定番以外のラインナップでいくつかの種類があることは以前の記事で書いたとおりだ。今日はそれをまとめて楽しめるお店を紹介したい。実は数軒あるのだが、一番お勧めなBarは渋谷の神泉にある。その名は「ル・ザンク」だ。
《中略》
お店に行ったら、色々とシャルトリューズの話を聞くのも面白い。薬草系リキュールが好きな人には、蒸留後のシャルトリューズの「かす」を見せてくれるかもしれない。色々な薬草が混じってくっつきあっていて、匂いをかいで見るとほのかにカレーのような香りがする。ターメリックのような薬草も蒸留の過程で使われているようだ。但し、シャルトリューズの製法は秘伝なので確かめようが無いが・・。

(2008年10月01日のエントリー「色々なシャルトリューズが楽しめるBar」より)

 そしてこちらはシャルトリューズを楽しむのにオススメのバーの紹介だ。ひとつの銘柄のリキュールといえど、これほど奥の深い物語が横たわっている。それを知って味わえば、よりお酒が楽しめることは、言うまでもないだろう。

 この『リキュール小話』では、リキュールに限らずお酒にまつわるいろいろな物語が紹介されている。「赤ちゃんに贈る日本酒」と題された記事も、なかなか味わい深い。

今年の7月に大学のサークルの後輩に娘さんが生まれた。
《中略》
学生時代も社会人になってからも、その後輩とはよく酒を飲み歩いていた。だからなんとなくお酒のプレゼントをしたい。でも赤ちゃんはお酒など飲めない。それではどうしたら良いのか?そうだ、赤ちゃんが20歳になったときに飲めるお酒を持って行けばよいのだ。
《中略》
生まれた年に仕込んだ長期熟成用の日本酒を赤ちゃんにプレゼントし、それを家で自家熟成させ、赤ちゃんが20歳に成長した成人式の日に、そのボトルの封を切って20年物の古酒を楽しむというものだ。20年の時をプレゼントするなんて、素敵な贈り物ではないだろうか。

(2005年09月06日のエントリー「赤ちゃんに贈る日本酒」より)

 なお、瓶の包装に赤ちゃんの誕生日の新聞紙を使えば、20年後、その日に何があったのかを知ることができるという。一本のお酒が人の歴史の伴走者になる――なんともいい話ではないだろうか。

 またChunさんが、行なっているという「シニア外国人向けの日本酒・焼酎の会」なるものも実に興味深い。

 「以前、外資系金融機関に勤務していた頃、外国から日本に赴任してきた方々の奥様が日本で時間を持て余し、結局それが家庭内の不和につながったり、夫自身の望まない早期帰国につながるということがありました。そこでシニアのご夫婦の何組かを私がセレクトした日本酒や焼酎を取り揃えたレストランにご招待して、和食とお酒の楽しみ方や、家での簡単な和食の作り方などをレクチャーさせてもらったのが、この会です」

 外国に来ると、なかなか自分だけではその土地の風土や食文化の良質な部分に接することはできない。そこでChunさんは、そんな外国の方にちょっとした橋渡し役を買って出たわけだが、その後、参加者は日本のお酒を通じて親睦を深め日本に馴染んでいったという。

 「外国人のパーティーと言うと、ビール瓶をラッパ飲みしたり、ワインを楽しむというものになりがちです。ですが、シニア層を中心に落ち着いた雰囲気で日本酒や焼酎の楽しみ方を知ってもらったところが、喜んでもらえたポイントなのかもしれません」

 こういうお話やブログの記事を見ていると、Chunさんが提唱したいのは、お酒に関する固定観念を捨て去る、またお酒に対して柔軟に構えることで、より楽しくお酒を飲めるということであるように思えてくる。

 「とりわけ男性は、バーなどに行っても新しいお酒にチャレンジしてみるということをあまりしないように思います。なんとなく飲んでいるお酒。そういった習慣を変えて、何かを探してみるという行動をとれば、お酒を通した新しい生活シーンを生み出せると思います」

 人というのは、往々にしていったん確立した自分の趣味や性向を堅持したがるものだ。「俺はバーボンが好き」「私は日本酒が飲めない」。しかし、子供のときに食べられなかった茄子が大好物になったように、刻々と食の好みも変化するものだ。大人になった今、その変化のために必要なのは、ちょっとした好奇心なのかもしれない。この『リキュール小話』を読んでお酒に対する好奇心を刺激し、今までとは少し違うお酒の楽しみ方を実践してはいかがだろうか。

(岡部敬史)



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