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大人のブログ探訪

『酢を造るといふ仕事』

2008/02/07

『酢を造るといふ仕事』

 京都府の日本海側にある小さな街・宮津。ここに飯尾醸造というお酢屋さんがある。創業は明治26年。110年間ずっとお酢を造りつづけているという、この老舗の5代目見習い・飯尾彰浩さんが綴るのが、今回ご紹介する『酢を造るといふ仕事』だ。

 「以前にもウェブサイトはありましたが、やはり頻繁に更新するのにはブログのほうが適しているので始めました。というのは、私たちの酢を造るのには、米作り(春~秋)、酒造り(冬)、酢造り(原料の旬によって異なる)と、季節感を感じていただける要素がたくさんあり、お伝えしたいこともまたたくさんあります。そういった一つひとつのシーンを綴っていくことで、これまで以上に安心して酢を使っていただければと思っています」

 このようにブログを始めたきっかけを話す飯尾さんには、恵まれた自然とその中で行なわれる酢造りのシーンが、都会で暮らすお客さんたちにとって一服の清涼剤になれば――とも考えているようだ。では、そんな彼のブログのなかからいくつかの記事をご紹介しよう。

酒蔵からローリーで酢蔵に運び、いよいよ圧搾(搾る作業)が始まります。(中略)いろんな蔵を見せていただきましたが、絞り槽を使っているところは極僅か。さらに、圧力をかけて搾っていく作業を人力でやっている蔵は未だかつて見たことがありません。普通は油圧式なので、おそらくボタンを押せば楽にできるはず。でも、この作業を大勢でやることに価値を見出してくださる方もいらっしゃるのでは? 私自身は、機械化されていないため絞り過ぎず、結果として美味しい酢が出来上がるものと信じています。
(2006年12月05日のエントリー「紅芋醪(もろみ)の圧搾作業、観ている人はいいのですが・・・」より)

 こちらは、酢を造る作業工程のひとつ「醪を絞る」模様を伝えるエントリーなのだが、昔ながらの仕事ぶりが、写真と文章で活き活きと伝えられているのがよくわかるだろう。そしてこの作業は、感動の一瞬へと立ち至る。

苦労して作業すると、このようにご褒美がもらえます。チョロチョロと控えめに流れ出てくるとき、この仕事をしている者にとってはなににも換え難い時間です。とはいえ、これでできあがりではありません。すぐに酢の発酵タンクに移します。つまり、やっとアルコール発酵が終わっただけ。これから4ヶ月近く酢酸発酵を行い、1年ほど熟成させる必要があるのです。紅芋酢の仕込みはまだ始まったばかり。しかも、今年は紅芋醪の仕込みを3回行います。考えただけで大変。

 このブログでは、このように酢を造る現場で何が行なわれているのかが、実に丁寧に伝えられている。

 そこで、改めて感じるのだが、こういった発信は実に貴重だ。昨今、様々な商品が手軽に買えるようになった。そういった社会は、もちろん便利ではあるけれど、一つひとつの商品の背景にある努力や苦労といった物語を読み取ることが難しい。こういった事情と、昨今、世間を賑わせる偽装や食品を大切にできない子供の増加といった問題は決して無縁ではないだろう。

 そんな中、このブログからは、生産現場の実に真摯な姿を感じ入ることができる。今、多くの生活者がインプットしておくべき情報のひとつのように思えてならないのだ。またこのブログにはこんな発信もある。

下北沢にある居酒屋「酒党 安寅"(あんどら)」に行って来ました。このお店は弊社の酢を使ってくださっているお客様から、「富士酢を使っているお店」と紹介いただいたのです。
(中略)
私が1回伺って感じた料理の特徴は、「一皿で二度美味しい」です。まずはこれ。「生さんが」というか、味噌を入れていない「なめろう」のような料理。実はこの料理、私のために作ってくれたのでメニューには載っていません(メニューには、「サンマのなめろう」が)。さて、どんな料理かというと、大葉やネギと一緒に叩いたサンマに醤油を回しかけ、四角の皿に載せた後、四隅に『純米 富士酢』を注いだもの。ひと口目はサンマの刺身だったのに、食べ進むうちに少しずつ富士酢で〆られていくのです。特にサンマなど青魚の脂は美味しい反面、しつこさを感じることがありますが、これなら最後まで美味しくいただけます。すばらしい! お店に行かれる方、ぜひ注文してみてください。「サンマの生さんがを富士酢でアレンジした料理。富士酢の見習いに出したヤツ。」と言えば、わかってもらえると思います。

(2006年10月12日のエントリー「北沢の居酒屋『安寅"(あんどら)』の料理は一皿で二度美味しい 下」より)

 こちらは先ほどの記事とはちょっとスタンスが変わった「美味しそうなエントリー」。こういった記事には、飯尾さんのこんな想いがあるという。

 「ご紹介したお店(特に富士酢をお使いいただいているお店)にお客様が通ってくれればいいなと思っています。また、酢を使った美味しい料理やレストランを紹介することが、読者の皆さんに充実した食生活を送っていただく一助になればとも考えています」

 また飯尾さんは「微力ではありますが、こういった発信が地域の活性化に貢献できればと思います」と、ブログを綴る意義を語ってくれた。

 ブログという手軽な発信メディアが普及することの意味において大切なのは、発信者の増加にあると思う。それまでは、世間に広く発信することは、一部の人にしかできないことであった。このため世に知れ渡るニュースは限られ、地方における地道な活動は、次第に斜陽に追い込まれていった――。

 だが、ブログはこういう状況を救ってくれる。そう思っている。今、世間には確実に「画一化されたもの」や「大都市中心の大量生産・大量消費」に違和感を覚える人が増えている。そんな人たちにとって、このような地方都市からの元気な発信は、何よりも嬉しく、未来への希望に繋がるものではないだろうか。この『酢を造るといふ仕事』のように、小さいながらも元気で真摯な発信が増えることを願ってやまない。

(岡部敬史)



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おめでとうございます。
ひとつひとつ地道な積み重ねが評価されたのですね。
見ている人は見ている!
そんなことを改めて考えさせられました。
飯尾醸造と言う真っ当ななものが正当に評価されるように、まずは自分、そして隣人に飯尾さんのお酢を薦める努力をします。
おめでとうございました。

投稿情報: 佃の旦那 | 2008/02/09 10:19:47

富士酢を知ってからは他のお酢を使わなくなった私です。
そして「酢を造るといふ仕事」ではその仕事の大変なこと
、そして真剣な姿にふれました。
これからも富士酢を応変していきます。

投稿情報: まろりん子 | 2008/02/09 8:48:26

おっと、こんなところに
活動が評価されていくのは
嬉しいことですね~
これからも頑張ってくださいね、飯尾さん!!

微力ながらも応援してます!

投稿情報: 沙樹 | 2008/02/09 7:04:10

飯尾さんおめでとうございます!
僕の大好きなブログが高い評価を得てとても嬉しいです。
企業や生産者のブログは多くありますが「酢を造るといふ仕事」ほど、いいものを作ろうという真剣な気持ちが伝わってくるブログはありません。
今後も期待しています。ぜひ長く続けて欲しいと思います。

投稿情報: くに | 2008/02/08 18:54:47


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