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2008/04/03
「もっとも好きな小説は?」と問われて「司馬遼太郎の『坂の上の雲』」と答える人は、少なくないだろう。今日、ご紹介するのは、そんな『坂の上の雲』ファン必見の、実に読み応えのあるブログである。 新しいカーナビを購入したので、試しに横須賀まで戦艦「三笠」を見に行ってきました。
五月晴れの空にZ旗を掲げた艦橋にのぼり、「艦橋の図」を参考にしながら同郷の偉人秋山真之が立っていたという同じ場所に立ってみました。 これが今回ご紹介する『Z旗ブログ ~「明治」という国家~』の第一回目の記事である。このなかに「ライフワーク」という言葉があるが、これは決して誇張した表現ではない。そのことは、このブログ内のラインナップを見ればすぐにわかるだろう。 まず、その記事の量がすごい。明治元年の前年にあたる1867年から明治が終わる明治45年まで、年ごとに書かれた記事に加え、乃木希典や東郷平八郎といった明治を代表する人物。そして『坂の上の雲』関連のエントリーなど巧みに細分化された記事が多数並ぶ。 また、それら記事は、2008年03月20日 には、1882年(明治15年)3月20日にオープンした上野動物園について。また、2006年11月04日 には、この日が命日である秋山好古の最期の描写という具合に、「今日は何の日?」形式で書かれており、日記形式というブログの特性を上手に生かした、読んでいて飽きがこない工夫がされている。 これほどまでに作りこまれたブログはどのようなきっかけで始まったのであろう――。管理人の海座さんは、このブログを始めた動機をこのように話す。 「愛媛出身ということもあり、司馬遼太郎氏の小説『坂の上の雲』の3人の主人公、秋山好古、秋山真之、正岡子規の生き方に感動し、『Z旗』というサイトを4年前(2004年)に開設しました。 このとき、このブログは『Z旗ブログ』というタイトルで、サイトの更新履歴や日記程度といったものでした。これを明治主体の内容に切り替えたのは、2005年の10月に「明治村」を訪ねてみて、小説『坂の上の雲』の舞台そのままの世界に惹きこまれたこと。 また司馬氏の著書『「明治」という国家』の中の『明治は、日本人のなかに能力主義が復活した時代であった』という一節に感銘を受け、この時代に生きた人々、出来事をあらためて掘り下げてみようと思ったからです」 こういった動機でこのブログを始めた海座さん。実は、このブログ以外にも『坂の上の雲』に登場する人物・用語をまとめた辞書ブログである「『坂の上の雲』人物・用語辞典」や、『坂の上の雲』」のゆかりの地を撮影した「『坂の上の雲』遺産 ~雲の下の風景~」というフォトブログ。それに明治時代の新聞記事を掲載した新聞ブログである「『坂の上の雲』新聞」など、ちょっとした新聞社が持っているデータベースなど凌駕するのでは、と思えるほど多彩なコンテンツを制作しているのだから、驚きだ。 「司馬遼太郎氏は小説『坂の上の雲』を完成させるのに10年費やしたといいますが、それぐらいかけて頑張ろうと思っています。それにはまだまだ文献・資料が少なく、週末には古書店を巡ったり、ネットで購入したりはしていますが(いつしかそれが趣味になってはいますが)、時間の経過と共に、明治時代の文献も廃れてきたりしていますので、1日でも早く良書に巡り合えることを切望しています」 このように巷に流布している情報をまとめるだけでなく、新たなエピソードやニュースを発信することにも余念がないのだ。そうして作った記事には、多くの反響が寄せられることが多いという。 写真は1908年(明治41年)に日本初の美人コンテストで見事1位に輝いた末弘ヒロ子さん(当時16歳)です。 主宰はアメリカの新聞社「シカゴ・トリビューン」で、その依頼を受けて日本の「時事新報社」が令嬢を対象に美人写真大募集を行いました。 厳しい審査の結果、日本一の美人に選ばれたにもかかわらず、彼女には不幸がおとずれます。彼女は当時女子学習院中等科に在籍していました。学習院といえば風紀を重んじる校風。ましてや当時学習院院長であったのが、これまた軍紀に厳しかった乃木希典であるからなおさらのこと。乃木はこの結果に「けしからん!」と猛反対します。そして、乃木院長はヒロ子に退学を命じます。 これはそんななかでも、とりわけ反響が大きかったという記事の導入部。ちなみにこの記事の顛末を補足しておくと、美人コンテストで1位に輝いたヒロ子は、結局自主退学させられてしまう。しかし、乃木希典は、彼女のために結婚相手を探し、その婿となる侯爵家の息子との結婚式で自ら仲人を務めたという。 「この話は、明治村にある学習院長官舎の建物内に掲載されていた乃木希典の逸話です。この記事は、驚くくらいのアクセスがあったので、とても印象深いですね。それで今年は、この明治美人コンテストからちょうど100周年ということもあり、あらためて自サイトに特設ページを設けています」 歴史や小説をテーマにしたブログやサイトは少なくないが、その多くが、その小説なりに掲載されている内容を紹介しているに過ぎない。しかし、この『Z旗ブログ ~「明治」という国家~』は、ベースとなる情報を上手に整理して見せるだけでなく、あまたのプラスαの情報を提供している。熱心な読者がたくさんいるのも、当然の結果だろう。 「このブログやサイトをやっていて嬉しかったのは、小説『坂の上の雲』の登場人物や、明治を代表する偉人の末裔さんとお知り合いになれたことです。例えば、正岡子規、山本権兵衛、有馬良橘、梅沢道治、郡司成忠、川島億次郎などです。これからももっともっと、この輪を広げて行きたいと思っています」 現在、NHKでは、この『坂の上の雲』のドラマが制作中と聞く。これからますます注目を集めるであろうこの作品と明治という時代。それらについて知りたくなったときは、迷わずこの『Z旗ブログ ~「明治」という国家~』をオススメしたい。 (岡部敬史)
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投稿情報: 海座 | 2009/04/20 1:19:00
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