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2009/05/14
今回ご紹介するブログは『私の灯台巡り』。タイトルからもわかるとおり各地の灯台を巡った記録である。 「私はドライブ好きなのですが、以前、たまたま地図で見つけた灯台を目的地にしたことがありました。このとき最後は車を降りて、岬の山道を分け入って目的地を目指したのですが、突然、目の前に小さな白い灯台が現れたとき、とても感動しました。黄金色に輝く海を背景にした灯台の姿の美しさはもちろんですが、そこに至る道のりを体験したこと、またその灯台の姿はほとんどの人が目にすることがない特別な存在であるということも相まって、私は灯台というものの存在に強く惹かれたのです」 このように灯台との出会いを語るのは、このブログの作者である田中さんだ。彼によると、灯台の魅力とは、灯台そのものよりも、その灯台が立つ風景にあるという。 「どんなに小さなものでも、灯台は人工産物と思えないくらいそこの景観に溶け込んでいます。その自然と一体化した風景を写真に収めることはとても感動的な体験ですね。また、灯台がなければ訪れることのない地に足を運び、その土地の歴史や風土などに触れることも楽しいです」 ちなみに田中さんによると、現在、日本には3300基ほどの灯台があるという。それらの灯台は、大きさや光到達距離などによって分類されるのだが、一般によく見られる大型灯台は約700基で、そのなかで登れる灯台は15基あるそうだ。その他は堤防や港、あるいは埼や岬に人知れず立つ小型灯台だという。近年主要な大型灯台以外は、LED灯への変更が進んでおり、昔のようにグルグルと黄色い光りを回転しながら放っていたもののいくつかは、白い光りの点滅に変わってきているそうだ。 では、ブログの記事から、そんな灯台の姿を見ていこう。 半島の付け根あたりに車を停め、そこから整備されている遊歩道を半時間くらい歩くと、この押回埼灯台にたどり着く。ちょうど紅葉の時期であったが、他に誰一人出会うことはなかったかわりに、猿の群れと遭遇した。《中略》紅色、黄色に色づいた木々の間を歩いてきて、突然開けた視界。広がる青空と日本海。そしてその中たたずむ白い灯台が目に飛び込んで来たときは、思わず『ウワー!』と声を出して感動してしまった。 これは、田中さんが巡ったなかでも特に印象に残った灯台だという。やっと灯台に巡り会えたときの感動が、あざやかに蘇ってくる記事ではないだろうか。 青森県の灯台を巡る中、最もゆっくりと時間が流れたように感じたのが今回記事にする尻屋埼灯台であろう。《中略》尻屋埼灯台で過ごした時間がゆっくり流れたと感じた一因は、音がなかったことかも知れない。もちろん耳をすませば、波の寄せる音や他の観光客の声なども聞こえては来る。しかし太平洋から吹き続ける風の音だけが耳元で強く聞こえるのである。風は物に当たって初めて音となる。耳に当たる音だけが聞こえるとき、不思議に音が無いように私は感じてしまっていたのである。 田中さんは、灯台がその自然と溶け込む姿に心を動かされるというが、その最たる場所がこの青森の歴史ある灯台だったという。音に関する記述が、読み手の想像力をよりかきたててくれるよい記事だ。 また、ブログの記事を通じて、読者とこんな交流が芽生えたこともあるようだ。 以前、北海道函館を訪ねた時に巡った葛登支岬灯台を記事にしたのですが、それを読まれた、お父様が灯台守だったと言われる女性からメールをいただきました。その方が幼い頃に、お父様が葛登支岬灯台の灯台守をされ暮らしてみえたとのことで、私が灯台周辺の道なども写真と共に触れていたため、懐かしく感じられて連絡をいただいたのです。 灯台守のお父様をもつ読者からのメッセージは、実際にその地に足を運んだ田中さんにとっては、とても神秘的なものに感じられたことだろう。 「ちなみにその方が、昨年、北海道の地球岬に行かれたとき、私宛の黄色いリボンを結んできて下さりました。私は、この夏、そのリボンの回収を兼ねて地球岬灯台を訪ねる予定です」 なんとも味わい深い交流だ。こういったドラマや灯台の記事を見ていくと、船の道標となる灯台は、地上から来る人にも、何かしらのメッセージを伝えてくれる存在なのかもしれない――。そんなことを感じる。あなたも今度ドライブに出かけるとき、近くの灯台に向かって車を走らせてみてはいかがだろうか。 (岡部敬史)
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