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2009/04/09
日本において本格的にブログが普及したのは2004年のこと。それから早5年の歳月が過ぎて、ブログに対する世間の認識も大きく変った。 その認識の変化における最たる点を挙げれば「完全にツールとして定着した」ということであろう。その黎明期においては、とにかくブログを作りさえすれば話題になった。「社長ブログ」や「企業ブログ」といったキーワードも、こういった流行の中で生まれた言葉であった。 しかし時代は変った。もはやブログを作るだけでは、特別なアナウンス効果もない。何を書くか。どういったコミュニケーションをとるのか。その質が問われる時代になったわけだ。個人が自身のために書くブログならいざしらず、企業がPRのために行なうブログは、いっそうこの「質」が求められる時代になったのだ。 では、ブログにおいてこの「質」とは、何を言い表わすのだろうか。 高名な作家が、名文を寄稿すれば質が高いといえるのか――。ことブログにおいては、これは否であろう。では、ブログにおける質の高さは何か。 この答えのひとつには、目線の問題があるだろう。テレビやラジオと違って、ブログというメディアは、発信側と受信側の垣根がないのが特徴だ。 ブログという誰もが作れるメディアにおいては「受信者=発信者」である可能性が極めて高い。ある記事を読んだ人が、自分のメディアであるブログにその記事に関することを書く。この受け手が書くということが、ブログの大きな特性であり、これによって他のメディアにはない「伝播力」が引き起こされる。そしてこの伝播力を喚起させるために必要なひとつのファクターが、発信者が受信者に近い目線で書くことだ。 そんなブログの特性をよく理解して、企業ブログにおけるひとつの理想的な発信を続けているのが、今回ご紹介する『サントリーグルメガイド公式ブログ』である。 グルメガイドブログスタッフのゆみです。銀座一丁目にある、" Natural Dining MAIDO(ナチュラルダイニング まいど)"様に伺いました。 たとえば、これは日常のエントリーのひとつ。スタッフがお店を訪れたレポートは、ごく普通の日記だが、それが逆に親近感をもたらす。読みやすいな。こう感じた読者は、普通の友達が書くブログのようにここを訪れて、そして紹介された店にも足を運び、自分のブログを持っていたなら、その紹介文を書いていく。こうして情報の輪が、広がっていくわけだ。 また、サントリーは、ブログの書き手が「書きたくなるイベント」を運営するのも巧みだ。 「おいしい樽生ビールって、どういうもの?」ということを関西のブロガーの皆さんとともに学び、そして実際に「おいしい生ビール」を体感するため、「樽生セミナーin大阪」を開催いたしました! 《中略》 それでは、達人直伝のサントリー式「おいしい樽生の注ぎ方」を。グラスを45度に傾けて、ビールサーバーのコックを手前に倒す。これで"ビール"が注がれます。ビールを7割まで注いだらグラスを水平にして、泡を落ち着かせます。コックを今度は後ろ側に倒す。これで"泡"が注がれます。泡をこんもりと乗せて...完成~!下からライトを浴び、堂々とした姿のプレミアム・モルツの生ビールです! こちらは、文面からもわかるように、プロが注ぐビールの美味しさを実感してもらうイベント。目の前で行なわれるプロの技は、写真に撮っても面白いし文章にしても読者に喜んでもらえる。ブログをやっている人なら、書きたい欲を大いに刺激されるイベントといえるだろう。 サントリーでは、この他にも、ハイボールやシングルモルトと相性のよいフードを提案するイベントなど、ブロガーを対象とした企画を行なっている。こうした積み重ねによって、いつのまにかブログを書く人間の間で「サントリー」という名前が、自然と浸透していったように思う。 企業ブログというものは、一般のユーザーが抱く信頼感などが大切なポイントになってくるので、一朝一夕には、効果は現れないかもしれない。それゆえ、せっかちな企業では、ブログが有効活用されない例も少なくない。 しかし、焦らずコツコツとやっていれば、必ず読者の輪ができるはずだ。そして、そうやって醸成された輪は、何ものにも変え難い財産となることは間違いない。 この「すぐには成果が出にくい仕事」に必要なのは、担当者がブログを楽しむことだ。発信することが楽しい――。そう感じられるようになったとき、簡単には得られない財産を手にしているはずだ。サントリーのブログを見ると「楽しく発信しているな」とよく感じる。この点こそが、成功の大きなポイントになっているように思う。 (岡部敬史)
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