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2009/02/26
いつもとはちょっと違った風景を見せてくれるブログが、今回ご紹介する『魚眼レンズで見た東京』。タイトルからもわかるように、日常のいろいろなシーンを魚眼レンズで撮影しているブログだ。 「子供の頃から写真撮影が好きで、カメラは身近なものでした。建築設計の仕事をしていることもあり、構図に凝った写真や一瞬の光景を鋭く切り取ったような写真をずいぶん撮ってきましたが、ある日そういう『部分マニア』的な視点ばかりで物事を見るのに疲れてしまったんです。そこで、どのレンズよりも広く被写体を写せる『魚眼レンズ』で今まで見てきた街の姿を再確認してみようと思ったのです」 このように始めたきっかけを話すのは、このブログを運営するshinoさん。魚眼レンズといえば、文字通り魚の目で見たようなグネーっと湾曲した写真が印象的だが、shinoさんにとってその魅力とはどのようなものなのだろう。 「魚眼レンズで撮影すると、ほぼ180度パノラミックに写るうえに、直線がグネグネと盛大にゆがみまくるので、普段見慣れている『水平垂直の構成』がどこにもありません。この新鮮な視野でしょうか。あと、狙った被写体と同時に、それを取り囲むすべての背景がたくさん写りますので、撮影対象が周辺環境の中でどのような位置づけなのかがよく分かるところです」 ひとつの風景には、人やいろいろな物体が雑多に個別に存在している。それが魚眼レンズを通してみると、全体として不思議な調和を感じるようになる。こういった様子を「ホロニック」と呼ぶのだが、このような世界観を持てるところが、魚眼レンズの良さだという。 では、さっそく彼が撮影した風景をいくつか見ていこう。まずは、07年10月15日のエントリー「自動改札機 メンテ中!」。 通勤ラッシュ時に自動改札機が故障!そんな時どこからともなく現れるメンテナンスの兄さん。皆の熱い視線を受けながら、わずかなスペースで懸命に機械と格闘中です。 こんな導入文で始まるこの記事では、自動改札と格闘する係員の姿と行き交う人たちの情景がとても面白い構図で納まっている。 続いては、08年4月4日のエントリー「桜と中央線と鉄道マニアの橋」。 JR中央線の東中野駅の近所に、土手の桜並木と中央線がまとめて撮れる歩道橋があります。当然、鉄ちゃん達にはものすごく有名な撮影スポットで、この季節は橋の上と下のガードレールが鉄ちゃんでスズナリになっています。ここから新宿方面に向かった景色がそそる絵になるようです。望遠レンズをつけた高級一眼デジカメがずらりと立ち並び、なかなか壮観です。 こちらも桜と電車とカメラマンたちが、1枚の写真の中に不思議な調和とともに収まっているのがとてもユニークだ。この2枚の写真を見れば、さきほどの魚眼レンズの魅力ともいえる「ホロニック」の意味がご理解いただけたであろう。 また、08年9月15日のエントリー「ヨドバシカメラの建築に思う」や、07年1月9日のエントリー「銀座4丁目」など、日ごろ目にしている光景が魚眼レンズで撮影されたものを見ると、その興味深い違いがよりわかるのではないだろうか。実に面白い。 「一時期『広く写すのなら超広角レンズでもいいか』と気持ちが揺らぎましたが、ファインダー越しのグネグネとした視角を見るたびに、やはり魚眼レンズは特別にステキなものなのだと思いを新たにしています」 このように魚眼レンズで街の風景を撮ることを、とても楽しんでおられるshinoさん。「海外在住の日本人の方々にも多く見ていただいており、皆さんの持っている『東京の心象風景』を魚眼レンズが捉えているのかと思うと楽しいです」と語る彼は、「紹介しきれていない東京の街もたくさんありますし、そこでの人間の面白いしぐさや営みを、それを取り囲む周辺と一緒にフィルムに留めたいと思っています」とこれからの抱負を語る。 なるべく正確な記事のために、いろいろ調べてから書くという。このため「ちょっとした自由研究気分を味わうことで、好奇心の対象がずいぶん増えました」とshinoさんは語る。 こういった興味を持ち続けることで、shinoさんは人生を豊かにすることができているのだろう。この『魚眼レンズで見た東京』という楽しそうなブログを見ていると、そう感じるのだ。 (岡部敬史)
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