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大人のブログ探訪

ユーラシア大陸 お仕事日記

2006/12/07

ユーラシア大陸 お仕事日記

 ここ数年,中高年層を中心に盛り上がっているのが「世界遺産」だ。日本の屋久島や白神山地だけに留まらず,世界中の“遺産”に脚を向ける人が増加中だという。そんなブームの影響もあって,年々注目されているのが,中央アジアやロシアといった地域だ。この土地の世界遺産を巡るツアーなどは,かなり高額かつ長期の日程にも関わらず,コンスタントに多くの参加者が集まるという。

 とはいえ,カザフスタン,キルギス,ウズベキスタンといった中央アジアの地域は,ままだまだ日本での知名度は低い。潜在的に行ってみたいという人は多くても,その情報でさえ充分とはいえないだろう。

 そんな状況において,中央アジアやロシアなどの情報を発信して人気を集めているブログが,『ユーラシア大陸 お仕事日記』だ。

 「自分のブログを見て『中央アジアに行ってみたい』とか『中央アジアに行ったような気分になる』と言ってもらえるのがいちばん嬉しいですね」

 このようにブログの楽しさを語るのは,中央アジアやロシアでの取材コーディネーター・通訳をしている山田美帆さん。彼女が綴るこのブログには,日本人があまり知らない土地のリアルな生活と旅の魅力が溢れている。

 入り口で車掌さんにチケットを見せて車内に入ります。コンパートメントに入ったら,まずは先客に軽く挨拶を。荷物は上の棚か下段ベッドの下に入れましょう。私のベッドは上段。上段のベッドに荷物を置き,下段の女性の隣に座り,どこへ行くのか…などとおしゃべりを始めます。カザフ人女性のジャンナはパブロダール(カザフ北部の町)出身。耳の病気の治療でアルマティに来ていて,家に帰るところだと言います。こうしているうちに同室者が揃いました。ジャンナ以外には,アスタナ経由でサンクトペテルブルグに出張するというカザフ人の軍人さんのおじさん(ラシッド),そしてカラガンダの親類を訪問をするという朝鮮人青年のセルゲイ。

 これは,「列車の旅のススメ」(2005年10月26日)に綴られた中央アジアにおける列車の旅のワンシーンだ。

 このように,土地の出来事を“情報”としてではなく“旅の記録”として発信しているところに,読み物としての面白さがあると思う。そして,文章に接していくうちに,自分もその旅をのぞき見ているような感じがするのが魅力的だ。

 では,山田さん自身は,中央アジアという日本にとってあまり身近でない地域のどういったところに魅力を感じているのだろう。

 その答えの一端を「山と星空と子供たち」(2005年10月24日)というエントリーから見てみよう。

アルマティでの最初の住まいは大学の寮でした。部屋の窓からは天山山脈の支脈が間近に望め,毎朝晩,窓辺に寄りかかってはぼんやりと山を眺めているのが好きでした。言葉もまだままならず,行動範囲も狭く,その頃付き合いのある人たちといえば寮の住人たち(人種の坩堝のような騒々しく退屈しない寮でした),クラスメイトの外国人たちに,ごく少数の日本人くらいでした。そんな環境に身を置いていると1ヶ月もしないうちに徐々に言葉を覚えていき…その後コーディネーターや通訳の仕事をするようになりかれこれ10年になります。拠点を日本に移してからも年に何度かは中央アジアやロシアへ出かけるのですが,日々こうして東京で暮らしていると無性に恋しくなるものがあります。 それは,中央アジアの山々と星空,きらきらした瞳の子供たちと素朴で温かい人々。

 自身の中央アジアでの生活を振り返りながら,この地の魅力の源泉を考えたとき,彼女は,「中央アジアの山々と星空,きらきらした瞳の子供たちと素朴で温かい人々」であると綴る。

 たしかに,このブログに登場する,大自然と子供たちの笑顔は本当に魅力的だ。

 この地には,とりわけ資本主義的な観点で見た豊かさを象徴するようなものが登場するわけではない。しかし,自然の姿や子供たちの笑顔を見ていると,なんとも言えぬ“豊かさ”が味わえる。

 少し大げさかも知れないが,今の日本が失った“豊かなもの”が,この地には残っているように感じた。

(岡部敬史)


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