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大人のブログ探訪

『くにろく東京食べある記』

2009/07/23
『くにろく東京食べある記』

 今回ご紹介する『くにろく東京食べある記』は、数多くの飲食店のレビューを美しい写真とともにアップしているブログだ。

 「自分にとって参考になる情報が少なかったので、『それなら自分で作ってみよう』と思ったのが、ブログを始めたきっかけですね」

 このように語るのは、作者である「くに」さん。この「自分にとって参考になる」というのは、普通のお客さんの感想だったと彼は語る。

 「料理の専門家や、食べ歩きの達人の書いたガイド本やウェブサイトは数多くあります。しかし、僕にとって参考になったのは、そういったものよりも、自分の趣向にあった普通のブロガーの記事でした。だから僕も普通の人が食べ歩いて感じたことを素直に書きたいと思っています。そしてそういった記事は、けっこう人の役に立つとも思っているんですよ」

 この「専門家よりも普通の人の感想が役に立つ」という意見には、ブログやレビューサイトを見たことのある人ならば、意を同じにする人は多いのではないだろうか。では、そんな「普通の人」の視点に立ったレストランレビューのいくつかを、このブログからご紹介していこう。

京都の料亭・割烹とサントリーとのコラボ企画「京都の料亭割烹特集」です。僕自身、京都にはあまり行ったことがないし、京料理もそれほど食べていません。東京で食べれる高級な和食と京都の料亭や割烹で食べる京料理とはどう違うのか?折角お誘い頂いたのでその辺をしっかり勉強してきたいと思います。1店目は鱧(はも)料理で有名な「割烹なか川」。料理にも衝撃を受けましたが、ご主人のお人柄にも衝撃?ここは絶対にカウンターがオススメ。ご主人の素晴らしいトークが堪能できます。
(2008年9月16日のエントリー「京都 祇園 割烹 なか川」より)

 こちらは、サントリーの企画で京都の割烹に行ったときの記事。冒頭から「京料理はそれほど食べていない」と触れ、背伸びすることなく、率直な感想を綴ろうという姿勢が見てとれる。初めて体験した人はどんな思いを抱くのか――。一般の雑誌では、なかなか接することのできない、こういった感慨を中心に据えて綴っていることがわかるだろう。

 また、このブログは、多数配された大きな写真や文末に地図とともに紹介されているお店のデータなど、情報としての有益性が高いことも見逃せない。この点には、くにさん自身もこだわっているようだ。

 「僕が考えるよいレビューとは、1・独自の視点があること。2・店の個性が伝わること。3・役に立つこと。4・自分自身の真実にこだわること。5・著者に対する信頼。この5つが備わったものだと思います。なかでも3の『役に立つ』というのは、自分のなかで大事にしています。ブログは、個人が趣味で書いているものですが、『使える』という部分を意識しないと、なかなかよいレビューとして成立しないように思いますから」

 よいレビューとは何か? こんな根源的なことを考えさせてくれるメッセージではないだろうか。では、次の記事を見てみよう。こちらは、くにさんのブログの方向性を決めるひとつの契機となったJALPAKとサントリーのコラボレーション企画で、スコットランドのアイラ島を訪れたときのものだ。

アイラ島で宿泊したホテル「マクリーホテル」は大自然に囲まれた素晴らしいホテルでした。ホテルの裏には併設されたゴルフ場。それも海沿いのコースが気持ちよくて、散歩するのにちょうどいい。「マクリーホテル」は料理のおいしさが印象深いホテルでもありました。特に燻製はたまらないおいしさ。そして極めつけはやっぱり・・・水!でしょう。 《中略》 部屋でゆっくりして、歯でも磨くかと蛇口をひねってビックリ!茶色い水が出てきます。そういえば部屋に置いてある水のペットボトルはこれまでで一番大きいサイズ。でもこのペットボトルはホテルを後にするまで1度も開けられず、我々はこのありがたくも茶色い水を大切に使ったのでした。アイラ島のホテルの水がピート色だったということが、僕らにとっては感慨深いことでした。
アイラ島はやっぱりすごい!蛇口からピート色の水が出てくるとは!これは風呂に入らないと!お湯を張ると期待通りの?ピートの効いた風呂になりました。身体がものすごく温まるので薬効があるのは疑いない。これは薬草風呂ですね。

(2008年11月17日のエントリー「マクリー ホテル (Machrie Hotel) アイラ島」より)

 シングルモルトの聖地ともいえるスコットランドのアイラ島。ファンにとっては「聖なる場所」に足を踏み入れても、彼の筆致は、神保町のラーメン店を紹介するときと変わらない。こういったブレない姿勢というのも、くにさんの中では大切なファクターのようだ。

 「僕は、ブログを書くうえで『自分自身の真実にこだわること』を大切にしています。これは、どこかで聞いた話や、誰かの受け売りのようなレビューに魅力を感じないからですね。自分の思いに正直であろうと思っています」

 ブログは、オリジナル情報を発信することができる媒体だ。しかし、せっかく自分で作ったのに、そこで書くものについては、自分の言葉で発信されていないケースがあることも否めない。どこかで見たフレーズで綴れば「それらしく」は見える。しかし、本当に読者が求めているのは、素直な発信であることは、多くの人が自分に問いかければわかる真理であろう。

 最後に数々のレストランをレビューする、くにさんに「よい飲食店とは何か?」という質問を投げかけてみた。

 「僕が考えるよい飲食店とは、1・清潔であること。2・個性があること。3・コストパフォーマンスがいいこと。4・料理人の顔が見えることです」

 なるほど。いくつかの飲食店を自分の足で開拓した経験のある人にとっては、うなづける部分が多い答えではないだろうか。また彼は、なかでも「4」の「料理人の顔が見えること」が大切だと語る。

 「居酒屋であれば、置いてある酒はもちろん、燗のつけ具合などからも、その店の個性や店主の人柄が表れてきます。こういうお店が好きですね。いいお店は、お通しからも気持ちが伝ってきます。ひとひねりある素晴らしい品に感心することもあるし、いつも同じ品が出てくる店に、変わらない温かさを感じることもある。お通しから無言のメッセージを感じることが多いです」

 どこの街でもチェーン店が増える昨今、こういった店の個性こそが人生を豊かにしてくれるという指摘は、もっと若い世代に広まってもらいたい考えではないだろうか。

 「ブログを始めた最初の1年間は、ブログ活動をすることは、すなわち人との交流を広げることでした」というくにさん。ブログを書くというきっかけから、人の輪を広げ、同時に自分の中での飲食店に対する意識と見識を広げてきたわけだ。

 「食べる」という行為は、誰もが毎日欠かさず行なうことだ。ただ、それを漫然と消化するのではなく、高い意識のもと、「食べる」そして「記録」することで、こんなにも無形の財産が蓄積されるのだな――と、この『くにろく東京食べある記』を見ていると思うのだ。

(岡部敬史)



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楽しく拝見させていただきました!同じ「グルメ」というカテゴリーのブログで勉強になります。
やっぱり、作り出しているのは、“人”なんですよね。
これからも、楽しいレポートを期待しています。

投稿情報: ピッコロ | 2009/07/23 21:21:07

クマ二郎こと、くに君、おめでとう!!
最近のある新書の中に「ブログなんかやったって人生変わらない」なんてことが書かれてあったけど、そんなことないよなぁ。
少なくともキサマとオレとはブログで随分と人生が曲がった…じゃなくて変化したことは間違いない。
有名人にも随分多く会えたしね。
これからもラーメン二郎から、京都の料亭まで、幅広い内容の食べ物記事を期待しておるぞ。頑張れ!

投稿情報: ヒロキエ | 2009/07/23 14:25:51


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