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2008/06/05
「ネットマガジン」や「ウェブマガジン」という言葉をご存知だろうか。これは文字通り、ネット上における雑誌のことで、ファッションや生活、育児など幅広い分野において創刊されている注目のメディアである。 個人のブログやウェブサイトと異なり「雑誌」という立ち位置であるので、当然のことながら編集者が介在し、複数の書き手が、記事を取材し執筆する。それらが、無料で読めるのだから、なんとも便利な話ではある。 しかし、以前から、この「ネットマガジン」はもっと魅力的になりえるのになぁと思っていた。あくまで個人的な感想だが、既存のネットマガジンの多くは今ひとつ“身近”な感じがしなかった。注目を集めるネットマガジンの多くは、ファッションやクルマの記事においても既存のクオリティマガジンと同じかそれ以上のものであったりするのだが、逆にネットの強みである“発信者との近い距離感”が失われているような気がしていた。 せっかくネットでやるなら発信者の顔が見えるもの。作り手の熱意とか、現場の空気が伝わってくるものが読みたいなぁ。そう思っていたときに出会ったのだが、今回ご紹介する『トーキョーワッショイ』である。 「4年ほど前、ちょうどブログが流行し始めだした頃に、ブログに興味を持ちました。インターネット言語を知らない人でも簡単に更新可能なシステムと、ページごとにコメント投稿とトラックバックができるようなコミュニケーション機能を大変おもしろいと思いました。また、当時すごい勢いでブログが急増していて、ライターに憧れる人たちって多いことにも気づきました。そこで、このブログシステムを使って、何か違ったことができないだろうかと思ったのがきっかけです」 このように語るのは、この『トーキョーワッショイ』の代表を務める池上晋介さん。 ブログという簡易な発信ツールの出現と、それに伴って表面化してきた“書きたい”と思う人たち。そんなファクターに注目して池上さんが作ったこの『トーキョーワッショイ』で発信しているのは、人々の生活視点で見た「トーキョー」情報だった。 トーキョーワッショイは、「地域住民が集うコミュニティサイト」であり、「地域住民にとって有益な情報サイト」であり、「地域住民が世界に向けて発信する自己表現の場」でありたいと思います。 つまりトーキョーワッショイは、地域住民にとっての“プラットフォーム”であり、地域住民と社会をつなぐ“メディア”であり、そこで様々なプロジェクトや人が育っていく“インキュベータ”となることを目指しています。 人をうれしがらせるもの、素敵なものというのは、案外近場にゴロゴロと転がっているものだと思います。ちゃんとその存在に気づいて、ただ手にとることで、毎日の生活が数倍楽しくなるかもしれません。そして、その喜びを皆に伝達し共感することで、もっと大きなものになるかもしれません。その表現の場が、トーキョーワッショイになればと思っています。 これは『トーキョーワッショイ』内に掲げられたサイトのコンセプトを言い表したメッセージである。では、そんな意図のもとに、編纂された記事のひとつをご紹介しよう。 「別れる男に花の名前を一つ教えておきなさい、花は必ず毎年咲きます」というのは、なかなか有意義な概念だと思う。過去は変えられない。辛い事も哀しいことも沢山あったけれど、花を見て別れた恋人を思い出すのは、楽しかった記憶なはずだ。美しい花を見て憎しみの心を抱く人なんてそうはいない。《中略》花はかならず毎年咲く。花が枯れてしまっても、その花の美しさをいつでも思い出せるように生きて行ける。 書き手のパーソナリティが感じられ、現場の空気が伝わってくる記事ではないだろうか。こういう記事が好きだ。もちろん情報の量や鮮度ならば、既存の雑誌に分があるだろう。ただ、街に埋もれたシーンを「好きだから」「気になったから」という個人の視点で切り取っているところに、親近感が湧いて愛着が持てるメディアだと思う。ここにこそ、この『トーキョーワッショイ』の良さがあると思う。 「このサイトを運営するうえでの楽しさは、いろんな人たちがライターに応募してきてくれて、毎回いろんな出会いがあることですね。現在、総勢46名のスタッフがいますが、20歳から50歳以上の方までいて、職業も大学生、フリーターから、カメラマン、会社社長や弁護士など様々です。そんな人が一同に介して企画会議をしているときはとても楽しいですよ」 ネットメディアというと、とかく革新性だとか利便性ばかりが強調される。しかし、この『トーキョーワッショイ』は、どこかアナログっぽく懐かしく思える雰囲気に満ちている。 「トーキョーワッショイとは、東京の街で暮らす人・ 働く人・遊ぶ人のための、街の空気感、息遣いを大切にした地域文化エンタメブログです」 こんな標榜にあるような「空気感」や「息遣い」を大切にしているこの『トーキョーワッショイ』。まだまだ世間的な認知度は低いけれど、やりたいことをやっている楽しさが感じられるサイトである。ぜひみなさんにも一度覗きに行っていただきたい。 (岡部敬史)
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