大人のブログ探訪

「非天然色東京画」

2006/10/19

　久しぶりに昼間からテレビを見ていたら，散歩を取り上げる番組が多いことに気づいた。思い返せば，何年も前からウォーキングが中高年を中心にブームとなっている。以前はジョギングが健康ブームの主体だったが，より身体への負担が軽いウォーキングが注目されるようになった。

　最近ではスポーツ感覚のウォーキングから，より手軽な散歩へとブームは移り変わってきているようだ。散歩というのは，言ってみれば日帰りの徒歩旅行である。東京に住んでいる方なら下町巡り，近隣の神社仏閣巡りなどへと出かけようというわけだ。日本は伝統的な景観を保護する意識が薄いと言われるが，実際に歩いてみると，ところどころにレトロな建物や昭和を感じるような生活風景が垣間見られる。

　取り壊されずに残った昔の情景。毎日時間に追われて生活していると目にとまらないようなものでも，ゆっくりと散策してみるとハッと目に入ってくることがある。普段と違う視点を持って町を歩くというのは，とても楽しいものだ。

　今回紹介したい「非天然色東京画」は，まさに東京を散歩しているときに出会うレトロな都会の姿を写真でつづるブログ。主に23区内を散策し，懐かしさを感じるような瞬間，場所を写真に収めている。行ったことがある場所ではないが，なぜだか愛着を感じられる写真を見ていると，週末にでも散歩へ出かけてみようという気分になってくるから不思議だ。

　徒歩旅行といっても別に遠くへ行く必要はない。散策気分を味わうことが大切だ。自宅周辺を歩こうと家を出たなら，いつも歩き出す方向に背を向け，逆方向に歩いてみよう。慣れ親しんだ町でも，違う視点で眺めると少し新鮮な気分を感じられるはずだ。ブログに負けず，自分だけの懐かしいポイントを見つけてみてはいかがだろうか。

（原 如宏）

「プロ野球狂の詩」

2006/10/12

　個人発信メディアであるブログというものは，今まで接してきたマスメディアとは違った魅力を有している。そのことをわかりやすく体感するには，自分が興味あるジャンルについて追ってみるのがいい。

　前日延長15回を引き分け，37年ぶりの再試合となる決勝戦が行われ早稲田実業が駒大苫小牧を4-3と下し，1915年(大正4年)の第1回大会から出場している古豪として悲願の初優勝を飾った。4連投にも関わらず，斎藤は13奪三振の完投，駒大苫小牧も9回に今大会60号となる中沢の2ランで１点差まで詰め寄る意地を見せたがあと一歩及ばず涙を呑んだ。
（中略）
　73年ぶりの夏3連覇を果たせなかったとはいえ，駒大苫小牧には最大限の拍手と労いの言葉を贈りたい。春の出場辞退を余儀なくされた時には誰がここまでやれると思っていただろう。下を向く必要は全く無い，最後まで胸の透くような快進撃を見せてくれた事に感謝の気持で一杯である。
（「駒苫3連覇ならず，早実悲願の初優勝」06年８月21日）
http://allsport.blog21.fc2.com/blog-entry-297.html

　これは，野球について魅力的な記事をアップし続けているブログ『プロ野球狂の詩』のエントリーだ。この記事は，夏の甲子園，決勝戦の結果を受けてアップされたものだが，北海道在住のkaneさんが綴るブログゆえ，スタンスは駒大苫小牧寄りのものになっている。しかし，こういった私的感性が混じっていくところにこそ，大手メディアにない魅力があるのだ。

　「思い出深い記事を挙げるとすれば，今年の甲子園期間のものですかね。地元である駒大苫小牧高校の記事を書き続けたときに，伝説に残る過去の試合について何度か触れたのですが，普段のプロ野球の時に比べると驚くようなアクセスが連日続きました。改めて高校野球の注目度の高さを実感しましたね」

　このブログは，今夏の甲子園の期間ほぼ毎日更新されていたのだが，こういった作者の熱気が伝わってくる感覚も，なんとも心地よいものだ。

　「友人がブログをやっていて面白そうだったのと，ブログそのもののシステムや解析に興味があったので，ネタに苦労せず毎日のように更新できる大好きな野球のことをつづろうとスタートしました。ファイターズファンですが他球団のファンとも交流したくてプロ野球という大きなテーマにしたので，今後もより多くの野球ファンと交流したいと思っています」

　このようにブログを始めたきっかけを話すkaneさんが，今いちばん気にしていることは，なんといってもファイターズの動向のようだ。

　たかが1位通過に過ぎないかもしれないが，この意味は大きい。まるで子供の頃からの夢が叶ったかのようで言葉に詰まる。ドームに集結した満員のファンの異常なボルテージ，歓喜に沸き揺れるスタンド，これが日本シリーズの結果だったらと想像を巡らせると，鳥肌が立ち目頭が熱くなってしまった。
（中略）
　それにしても良くやってくれた。北海道に移転して来てわずか3年でこんな贅沢な喜びを得る事ができるとは夢にも思っていなかった。この勢いをそのまま次のステージへ，パ制覇，日本一まで一気に駆け上がる事を願って止まない。この先に待っているのは想像すらできないがこの比じゃないだろう。アドバンテージを得て始まる10月11日からの2ndステージが今から楽しみだ。
（「悲願の1位通過，3年目に結実」06年９月27日）
http://allsport.blog21.fc2.com/blog-entry-320.html

　これは，ファイターズがプレーオフ１位通過を決めた時点のエントリー。ここからは，作者の喜びと，次に迎える戦いへのワクワク感に満ち溢れている。
　手に取るように伝わってくる，作者の息吹がなんとも魅力的なのだ。

　新聞やテレビといった既存メディアにおいては，やはり“事実”の報道に時間が割かれる。しかし，これだけ多チャンネルの時代においては，ファンの間には事実はすぐに知れ渡る。となると，コアなファンほど，個人的感想や考えに触れたくなるものだ。

　そんなとき機能するのがブログであるということが，この『プロ野球狂の詩』を見ていただけるとわかると思う。

　文字数上の関係で内容は割愛するが，「親子で共有できる喜び」と題された06年９月22日のエントリー。
http://allsport.blog21.fc2.com/blog-entry-316.html

　息子さんが，どんどん野球好きになっていくのをkaneさんが嬉しく思う記事など，作者の姿が本当に間近に感じられて，とてもいいなぁ。

　この他，往年の名選手やユニフォームに関する記事など，読者を楽しませる企画が盛りだくさんのこのブログ。これから日本シリーズへと白熱するプロ野球観戦のお供にいかがだろうか。きっと新しい野球の楽しみ方に触れられるはずである。

（岡部敬史）

「ばーさんがじーさんに作る食卓」

2006/10/05

　気持ちはまだまだ若いのだが，なんとも身体が付いてこない。寄る年波に勝てないものである。年を重ねるほどに健康に勝るもの無しと思ってしまう。もちろん大病をしたわけではないのだが，無節操に好きなもの，美味いものだけを好んで食べ，お酒を飲んできたつけは，いつか自分に返ってくるだろう。

　じつは私自身も気にしている変調を60代前半で体験したという方のブログに出会った。この方は「人間ドックで，腎機能の低下や高脂血症などなどのチェックに引っかかり減量と毎日のカロリー計算を言いわたされました。以後，毎食のメニューは減塩・ローカロリーがキーワードになっています」と自身のブログに書かれている。

　しかし，そんな身体の変調を心配し，心強い味方になってくれた方がそばにいた。同い年の奥様である。旦那さんからのリクエストは「ローカロリーでも，マズイものはいや」というもの。ご自身でも「わがままだった」というが，奥様は家庭のシェフとして食生活に気をつける食事を用意されたそうだ。そんな生活から6年あまりたった昨年の2005年5月。健康に気を使う習慣がすっかりついたという旦那さんが奥様に感謝をこめ，試行錯誤をくり重ねている食卓の日記をつづりはじめた。

　ブログ「ばーさんがじーさんに作る食事」のはじまりである。奥様（cincoさん）が料理を作り，旦那（sesenta）さんのブログに仕上げる。「blogのまねごとをはじめることにしました」という第1回目を書いてから早1年5カ月。この間，週に4回から5回程度とかなり頻繁に更新をされている。

　ブログの主役は奥様が作る料理。レパートリーがとても豊富で，料理も工夫をこらしたものが多い。豪華なディナーは高級レストランに行けば食べられる。しかし自分たちの舌に一番合う味は，自宅でしか味わえない。料理にこめられた思いに加え，好きな味をどこまでも追求できる家庭料理はある意味で最高の贅沢。食べて健康になるなら，これほどの最高な食事ははない。

　このブログを読んでいると後10年後，20年後に同じような関係を身近なパートナーと築いていたいと願ってしまう。

（原 如宏）

「食い道をゆく」

2006/09/28

　今回ご紹介する『食い道をゆく』は，元法廷画家である作者が，日本橋・銀座・新橋界隈での食い道楽の模様を漫画にしたブログである。

　「数年前までは，毎日のように絵を描く仕事をしていたのですが，ここ5年間ほどは，ずっと経営と事務の仕事ばかりしていました。ただ，最近は時間の余裕も多少できましたので，再びイラストレーターとして“好きなこと”を絵で表現したいなと思ってブログを始めました。私にとっての“好きなこと”が食べ歩きだったので，今のスタイルになったということですね」

　このようにブログを始めたきっかけを語るのは，作者であるヒロキエさん。日本屈指のグルメストリートである日本橋・銀座・新橋界隈を食べ歩く記録なのだから，食通を唸らせる名店も登場するのだが，単なるグルメ日記になってないところが，なんとも楽しい。例えば，こんなエントリー，好きだなぁ（笑）。

　実はこの「ますたに」に限らず，私はどの店でもスープはまず「レンゲから啜（編集部注：すす）り」，次に「丼から直に啜り」ます。体調によって，どちらも同じ味だと感じるときもあれば，丼からの方が美味いと感じるときもあります。いまのところ，ラーメンのスープに関しては「レンゲから飲んだ方が美味い」と感じたことはありませんねぇ。ラーメンの場合，やはり丼から直にググッと飲むのが，スープの味わい方かな。特に濃厚なタイプのスープね。いつか洋食のスープも，皿から直に啜ってみたい…そんな行儀の悪い願望を持っている私です。
（2006年5月 5日「日本橋　ますたに」より

　このように作者独自の視点による食べ歩きの雑感が，味わい深い漫画とともにアップされているエントリーの数々には，毎日訪れたくなる魅力が溢れている。

　また，自ら会社を経営されている立場から抱いたこんな視点もユニークだ。

　「どうしたら自分のブログを売り出すことができるのかというプロデュース感覚。どうしたらアクセス数を伸ばすことができるのかというマーケッティング感覚などは，経営にとっても役に立つことが多いと感じています。ブログを日々更新していると，こんな感覚が鋭敏になってくるんですよ」

　この言葉など，まさに多くのブロガーが潜在的に思っていた事象をズバリ言い当てていると思う。また，積極的に様々なブロガーの方と交流している様は，ブログの楽しみ方の本流であろう。

　自分の好きなものを食べ，それを自分の好きなイラストで表現する。そして，そこからビジネスにも通じる感覚をも養い，様々な人との交流も体験している。

　『食い道をゆく』を見ていると作者であるヒロキエさんは，食べることだけでなく，ブログ自体をも楽しむことの達人であるなぁと感じる。そんなブログなのだ。

（岡部敬史）

「sobalier-maejima（ソバリエ前島）」

2006/09/21

　藪に更科，砂場という文字から何を連想されるだろうか。筆者の場合は「蕎麦」である。どの名前も，江戸の蕎麦文化を今に伝える老舗の蕎麦屋。 名前を目にするだけで，蕎麦が無性に食べたくなる。

　蕎麦というと日本を代表する麺料理となっているが，もともとは蕎麦切りと言われ，そば粉を練り上げて作る「そばがき」と区別されてきた。その 後，蕎麦切りを蕎麦と省略するのが一般的になり「蕎麦＝麺」として広く浸透していった。

　蕎麦を麺として食べ始めたのは17世紀初頭と考えられている。一般庶民の文化が花開く，江戸時代のこと。痩せた土地でも育つ蕎麦は日本各地で栽 培させ，名物そばがたくさん生まれた。代表的なものを挙げてみよう。北海道だと「新得そば」や「ニシンそば」。東北地方では盛岡の「わんこそば」，山形の「板そば」。 甲信越地方では新潟の「へぎそば」，長野県の「戸隠そば」「凍りそば」「善光寺そば」。近畿地方では，京都の「にしん鰊そば」，中国地方では「出雲そば」などがある。

　東京はとくに独自の美学を持って蕎麦文化が花開いた。そばの風味を味わうための食べ方として，辛いつゆに蕎麦を少し付けてすすり飲む。蕎麦を 食べるだけなら，さっと食べきってすぐに席を立つ。お腹一杯になるまで蕎麦を食べることは野暮とされた。老舗のそば屋に出向いて，そばを頼むと量が少ないと感じるのは この文化が残っているせいであろう。

　時代は変わって21世紀。江戸時代とはまったく異なる現代社会に移り変わったわけだが，蕎麦の魅力は薄れていない。蕎麦の文化を語りつぎ，江戸 の蕎麦を楽しむ人たちがいる。江戸ソバリエと自称する人たちだ。ソバ好きが講じてあちこちのブログを渡り歩いているときに，「sobalier-maejima（ソバリエ前島）」に出会った。

　管理人の前島さんは，江戸ソバリエ霞の会メーリングリストの管理者もされている。出向いた東京のそば屋さんをブログで紹介中だ。今に受け継が れたそばの味。いろいろ回って試してみたくなった方に，参考にしていただきたいブログである。

（原 如宏）

「機内食・ドットコム」

2006/09/14

　ブログを始めるきっかけのひとつに「塵も積もれば……」というのがある。

　特に目的があったわけでもないのにコツコツ集めていたもの。そんなものを「せっかくだから……」とブログで紹介してみたら大人気というケースがいくつかあるのだが，この『機内食・ドットコム』も，そんな一例のひとつだ。

　「機内食のブログを立ち上げた理由は，飛行機がもともと大好きで，飛行機に乗る度に機内食の撮影を行なっていました。それがかなりの数になってきたので，機内食紹介の専用ブログを立ち上げたのです」

　こう語るのは，このブログの作者のRikiyaさん。
機内食というのは，飛行機に乗るたびに誰もが楽しみにしているものだろうが，こうやってたくさんのものをふかんする機会はあまりないはず。それゆえ，いろいろ見てまわっているだけでも大変興味深い。とりわけオススメはありますか？と聞いたところ，この2つを教えてくれた。

　「まずは，ロイヤルブルネイ航空ですね。エコノミーなのに本格的なステーキを提供していたのが驚きです。オイルマネーで繁栄を極めるお金持ちの国の航空会社ならではと言えるでしょう。もうひとつ挙げるとしたら，やっぱり JALのファーストクラスでしょうか。キャビアなども出てきて，豪華さは満点です」

　このブログをいろいろ見ていくと，その情報量に圧倒されるが，これは読者からの投稿によって補足されている部分もあるようだ。

　「私が感じているひとつのネット原則に『情報は発信するところに集まる』というものがあります。私が発信している情報を見た人が『私もこんなの知ってますよ』と教えてくださる。通常では得られないような情報も，発信しているからこそ集まったりするんですよね」

　Rikiyaさんは，『情報は発信するところに集まる』というこのセオリーをこれからの情報化社会にとって，非常に重要な考え方だと認識しているという。

　たしかに，ブログという簡単な発信方法が登場した現在，日々集めている「塵も積もれば情報」を自分だけのコレクションにしているだけじゃ，あまりにも勿体無い。

　それを一般に公開することで多くの人を喜ばせるだけでなく，新たなる情報の集積所にもなりえるのだから，これほど有益なことはないだろう。

　あなたにも「塵も積もれば」と思って集めている情報はないだろうか。もしあるのなら，この『機内食・ドットコム』のように世の中に向かって発信してみてはいかがだろう。

（岡部敬史）

「梅之芝居日記」

2006/09/07

　少し前まで歌舞伎と聞くと，子供の頃に学校の社会科見学で観劇したことくらいの経験しか持たなかった。歌舞伎に対する知識は少なく，面白さも分からない。そんな筆者に転機が訪れた。歌舞伎をちょくちょく観に出かけるようになったのだ。実際，歌舞伎座に行ってみると，年配の人は多いのだが，若い女性もかなり見かける。なんでも若い歌舞伎役者のファンだという。

　一瞬，意外な印象を受けたのだが，テレビや映画の世界でも若手の歌舞伎役者が活躍している時代。歌舞伎界でも市川染五郎や市川海老蔵などの若手が人気を集めている。追っかけがいてもおかしくない。思えば，一時期は派手な演出で人気になった三代目市川猿之助一門の「スーパー歌舞伎」の話題をテレビでよく目にした。最近では，江戸時代の歌舞伎小屋の趣を再現した中村勘三郎の「平成中村座」など，歌舞伎に新たな伝統を伝える動きもある。

　歌舞伎は，ほかの古典芸能に比べると現代の人にも受け入れられる要素が多い。役者の動きが大きく話も分かりやすいのもその理由だ。面白い話は声を出して笑い，泣ける話は思わず目頭が熱くなる。受け継がれてきた伝統の味は，日本人なら必ず心に響く。古典芸能と伝統を受け継ぐ面と，現代の感性をプラスしていく柔軟さに気づくと，歌舞伎の世界にドップリとはまり始めることだろう。

　ブログ「梅之芝居日記」を訪れたのは，にわかに歌舞伎への興味が湧いてきてからのことだ。ブログの作者は中村梅之（なかむらうめゆき）という芸名で舞台に立つ現役の歌舞伎俳優。芸歴7年目という若手である。研修所出身ということもあり，舞台では脇を固める役が中心だが，ブログではそんな舞台脇から垣間見られる歌舞伎の世界を伝えている。普通の人は馴染みのない歌舞伎という世界で生きるということ，そして伝統を支える多く人が陰では努力し続けていることがよく分かる。

　表舞台の華やかさだけに目を配るのではなく，歌舞伎に携わる人の仕事ぶりをブログを通じて感じてみて欲しい。歌舞伎の観方が少し変わってくるかもしれない。

（原 如宏）

「昆虫ブログ むし探検広場」

2006/08/31

　今回ご紹介する「昆虫ブログ　むし探検広場」は，通常のブログとは若干異なるスタ イルを採っている。というのは，昆虫に関する読者からの疑問・質問に答えるという形で運営されているのだ。

　７年前にモンゴル旅行に行った時に砂漠（といっても，草がまばらに生えているのですが）に座って休憩をしていたらふしぎな飛びかたを する真っ白い虫を見かけました。（中略）

　帰国後に図鑑で調べてみたら，ビロードツリアブにソックリだったので「色は違うけど，ビロードツリアブを見たんだな」と思ってたんで すが今になって，「なんで真っ白だったんだろう？」と疑問に思えてきました。（中略）

　私が見たのはビロードツリアブだったんでしょうか？　教えて頂けると有り難いです。

　その質問というのは，「砂漠の中にある乾いた草原に真っ白いフワフワの虫が‥ 」と題されたエントリー内ではこのような感じである。

　とても素敵なお話ですが，私にも，そんなものがいるのかどうかはよくわかりません。でも，姿かたちはとても似ているようなので，たぶ ん，近い種類なのかな，という気はします。ほんとうに，写真があったらよかったのになぁと思います。２０ｃｍ大の巨大バッタは，ナナフシの仲間かな？砂漠といっても， 昆虫の世界はとびきり豊かなんですね。どなたか，モンゴルの白いアブについて，何かご存知の方がおられましたら，情報お待ちしています。

　この質問に対するブログの作者である「園長」さんは，こう答えている。このように日本全国から昆虫に関する面白い情報や質問がたくさん届くこ と。そして，その質問に，ガチンコ勝負で答えを出し続ける緊迫感が，なによりも楽しいと「園長」さんは語る。

　ただ，こうやって多くの人が参加できるブログというツールで発信することは，プラスアルファの楽しみを与えてくれるという。それは「自分には わからなかった難問も，ブログで呼びかけると，どこからか助けてくれる人が現れてくれること」だとか。

　コメントで情報をいただいたのですが，もしかしたらこの白いアブに近い種類かもしれない虫が，岡山県瀬戸内海沿岸で見つかっています 。撮影者のmosyupaさんのお許しがありましたので，写真をお借りして掲載します。しかし，トンデモなく，かわいいアブですよね！

　これは，先ほどご紹介した「白いアブ」に関するエントリーの追記部分だが，このように，質問者と園長さんのやりとりを見た読者が，情報を提供 してくれるわけだ。ブログというツールを使っていても一方的な発信ばかりになってしまう人もいるなか，なんと広がりのある交流をされているんだろうと，感心せずにはい られない。

　「身近な自然にもたくさんの昆虫たちが暮らしています。ともすると，嫌われたり，無視されたりしがちな昆虫の世界の面白さ，奥深さをあらゆる 世代の人たちに広く知ってもらいたい！と思ったことです」

　ブログを始めた動機をこのように語る「園長」さんの人柄が，なんとも心地よいこの『昆虫ブログ　むし探検広場』。子どもたちの間で昆虫ブーム が広がってもいる昨今，ぜひ，親子で楽しんでもらいたいと思うブログなのだ。

（岡部敬史）

「ぶらり四国八十八ヶ所霊場めぐり」

2006/08/24

　機械が作る大量生産の商品とは違い，人の手で作られた商品は，2つとして全く同じものを作る方は難しい。材料，気候，作り手の心持ち一つで微妙 に異なり，そこに商品の味が生まれる。

　旅も同じで，同じ場所に出向いたとしても，風景や出会った人によって異なる印象を持つ。とくに自らを見つめることを目的にした巡礼の旅はそれ が顕著に表れるようだ。

　60代後半の我が父は一昨年，四国88カ所の札所めぐりをしてきた。移動手段は徒歩。全行程50日の旅だった。若い人だと40日で回れるというお遍路 だが，年齢を考えて休みを取りながら回ったそうだ。数十年，夢描いてきた巡礼の旅ということもあり，一歩の歩みにも万感の思いがあったことだろう。

　しかし実際の行程で自然の厳しさを思い知ったという。道中は連日の雨。1日数十キロメートルもの行程を黙って歩いたそうだ。自分の前後を見ると 前日一緒の宿に泊まっていたほかのお遍路さんが歩いている。たまたま同時期に遍路めぐりを思い立ち，偶然にも同じ宿に泊まった。宿では会話をしたそうだが歩くときは1人 。黙々と次のお寺，目的を目指す。

　50日，約1400kmもの行程を歩ききった父は，体重が8kgくらい落ちていた。肌は浅黒く，修行の旅を終えたという姿に見てとれたのだ。当時の話を聞 いていると，2度と行きたくないくらいの厳しさを感じるのだが，当の本人は機会があればもう1度お遍路をしたいという。

　実際，1度では終わらず2度，3度，何十回，何百回とお遍路を続けている人がいる。同じ商品がないように同じ旅もなく，毎回いろいろな思いや気持 ちを感じる。父も2つとない体験を味わいたいのかも知れない。

　ブログに目を向けてみると，父が目指している2回目の巡礼を回っている方がいた。最初のお遍路は2004年9月にはじまり，2005年2月に結願。2巡目 は2005年6月からはじまり，まだ続いている。

　巡礼の模様はすべてブログ「ぶらり四国八十八ヶ所霊場めぐり」 でつづってきた。各札所までの行程や見聞きした雑学，行ってみて感想が簡潔にまとめられているお遍路ブログである。父に聞いていた札所の話が読みたくなり，このブ ログを開いた。ブログの記事を読みすすめるほどに，父の気持ちと，お遍路の魅力を感じさせてくれた。これからお遍路を目指したいという人は，ブログをガイドブック的に 利用してもらいたい。

（原 如宏）

「セスナ172操縦訓練日記」

2006/08/10

　このブログの魅力を説明するのに，あまり言葉は要らないと思う。

　まずは，空からの雄大な景色と，普段見ることのないセスナ機のコックピットからの視点の写真を楽しんでもらいたい。我々が旅客機から見るのと では，まったく違った風景にきっと見入ってしまうはずだ。

　こんな見事な情景をアップしているのは，このブログの作者であるTOMIさん。

　「飛行機の操縦をするという夢が叶ったのをきっかけに，自分自身のために日記を書いておこうという気持ちでスタートさせました」こうブログを 始めた動機を語るように，彼にとって空を飛ぶということは，まさに夢だったようだ。

　検査終了の日から約1ケ月後・・・その日は木枯らしが吹き荒れるとても寒い日だった。国土交通省からようやく届いた封書をおそるおそる開けてみるとそこには・・・小さな字で合格と書いてあった。永遠の飛行機少年が目指したパイロットへの道は，たった今まで完全に目の前の視界を奪っていた深い霧が，すーっと消えていくようにして，私の目の前にその姿を現したの だった・・
（2005.5.6『航空身体検査の壁』より）

　これは，このブログがスタートして間もないころの記述だ。この日の『航空身体検査の壁』というエントリーをすべて読むと，いかにTOMIさんがパ イロットに憧れていたのかが，よくわかる。そして，その夢はついに叶った。

　実は私がセスナに初めて乗ったのは遊覧飛行ではなく，学校で人文字を作って上空から撮影をする航空写真撮影の時だった。けなげに人文 字を作って待っている子供達を上空から見た時，飛行機のコックピットに同乗できた嬉しさとが一緒になり，感激で目が潤んだ。こぼれそうになる涙をぬぐいながら，『俺は・・俺は，ほんとに飛行機が好きだったんだ・・』とその時あらためて自分自身，気づくことになった。セスナという飛行機の操縦席に乗って飛んだ事によって，あらためて自分の存在なり，自分が心の底から望んでいたものにあらためて気づいたのだった。そしていつかこの飛 行機の機長席に乗って操縦するんだ! そう誓った。その夢はなんと，それから20年近くも経ってから叶う事になった。人生とはわからないものである。
（2005.7.17『かなった夢』）

　その夢が叶った日のことを，TOMIさんはこう綴っている。夢を追いかけるということは，本当に心を充足させてくれる。そして，その夢を叶えた喜 びは，何にも勝る感動を与えてくれる。

　一連の記事を読むとそんなことを感じた。

　この『セスナ172操縦訓練日記』は，雄大な空の風景が楽しめるだけではない。夢と いう，ややもすると見失ってしまいがちなものを，はっきりと認識させてくれるのだ。そんなところも，このブログの素晴らしさだと思う。

（岡部敬史）