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大人のブログ探訪

『イセザキ書房のブログ』

2009/02/12

『イセザキ書房のブログ』

 今回ご紹介するのは『イセザキ書房のブログ』。タイトルからもわかるように、街の本屋さんが発信しているものだが、そのメッセージ性の強さに惹かれるブログだ。

政治家はすぐに改革こそ国民の為だと論ずるが、私はこの『静かな静かな旅』という40年も前に更にその前の事を描いた絵に、えもいわれぬ幸を感じている。里山の美しさ、懐かしさ、世界的な変化の中で日本だけが取り残さる事は出来ないが、私達は古き良き時代を覚えておくべきではないだろうか。そして残さねばならない事もある。人間の心が失われてゆくのが恐ろしい。
『静かな静かな旅』を開いて眺めながら私達はテレビやマスコミにおどらせすぎているように思う。半世紀近く前の日本の風景の和やかさ、美しさ、優しさ。今この時代に痛切に感じる。例えばなぜすべてのテレビをデジタル化してしまわねばならないのか。出てきた古いテレビはどこへどう処分するのか。こういう事の起こる度に政治の裏の影を思わずにはいられない。古き良き上に新しいものを追加するべきだと思う。今大勢の自民党総裁を目指している人達はこういう事が分かっているだろうか。

 例えばこれは、2008年の9月9日にアップされた『静かな静かな旅を読んで』というエントリーの一節。

 優しいタッチで懐かしい日本の風景を描いた、今から30年以上も前に出版された本を読んで「改革ばかりを良し」とする現在の政策に疑問を呈しているものだ。きっと意見を同じくする人も多いことだろう。

 このように、お気に入りの本や時世の話にあわせて、自身のメッセージを綴っておられるのは、このブログの作者であるイセザキ書房の佐藤智子さんだ。

 「私の店の棚には、本に関するコピーを書いていっぱい貼ってあります。私流の言葉ですね。このように私はスピーチするのが好きですから読者に話しかけるつもりで文章を書きたかった。それがこのブログを始めたきっかけです」

 このように自身の店の中でも積極的にメッセージを発しているという佐藤さん。では、ブログのなかから、そんな佐藤さんの想いをもうひとつ見てみよう。

日本人は働きすぎと云われた事もあったが現代の日本人は働かなさすぎると私は考えている。祝祭日は何の為にあるのだろう。連休にする為に日を変えたり代替休みを作ったりするものだから何の休みか、ほとんど認識せずに唯、休みと思っているだけだ。意味不明の祝日など廃止すべきだと思う。人口も減ってゆくのだから国会議員の数も減らしてほしい。そして本当の庶民が安心して生きてゆけるような日本国にしてほしい。大企業の税金を下げるより庶民の税金を下げるべきだ。税金が安い外国へ行くというなら行ってもらえばよい。
日本人には日本人の特性がある。
器用な物造りが軽蔑されるのはまことにおかしい。
「日本人よ、世界同時不況だから本を読もう」と云った佐藤優氏の考えに大賛成である。知を磨こう。ものづくりに励もう。自分で考え自力で心豊かに生きてゆこう。

(2009年1月6日のエントリー『自力で血を流しながら生きてゆこう』より)

 こうやって二つのメッセージを見てみると、佐藤さんの想いの根底には、古き良き日本に学ぼうとする姿勢があることがわかってくる。「世の中が壊れてゆくのが悲しいですね。その原因には戦後教育があると思っていました。それを一人でも多くの人に理解してほしい。その一心です」。こういった彼女の言葉にもそんな心情がよみとれる。

 こういった想いを抱き、それを世に伝えたい――。そんな佐藤さんにとって、書店という仕事は、とてもやりがいがあるものだという。

所詮本屋なんてどんなに大きくても日本でナンバーワンの書店でも儲かってないのが現実です。儲からないように出来ているのが書店業界です。 出版社の事はよく分かりませんが本屋はほとんど年中貧乏です。
次の支払いは大丈夫か?そんな事を1年365日考えている経営者が大部分ではないかと思っています。でも皆本屋をやっている。(近頃息切れをしてお手上げする店も増えてきたけれど)なぜ本屋を続けられるの?こんな忙しいばかりの儲からない商売を。
自問自答する事もございます。まことに本屋は金儲けをしたい人には全く不向きな商売だけどそれさえ外せばこんなに素敵なビジネスはないと私は考えております。
だって毎日最新の本を手に出来る。好きな本を抱きかかえられる。
好きな作家の本の一頁をひらくと著者の声が聞こえてくる。
何度でも何回でも。
テレビではあっと思った瞬間次の画面に移ってしまうけど本は読みかえせる。 好きな言葉が出てきたらため息をだす暇がある。
幸福感にどっぷり浸れる。しかも好きな本には私なりの(大変下手な)コピーをつけて読者に呼びかけられる。それに目を止めて買ってくれた時の喜びは表現のしようもない程の嬉しさである。
私と同じ思いの人がいた・・・・・・・と思う喜び。
これは本屋でなければ味わえません。
すごい醍醐味です。

(2008年6月29日のエントリー『貧乏書店でも心は豊か』より)

 こんな意識で書店経営を行なっている佐藤さんは、本好きを育てたいという気持ちも人一倍強いようだ。そんな信念から綴っているのが「かみしばい」とカテゴリーされた一連のエントリー。「本好きを育てるには、まず紙芝居。そして絵本、児童書、それから本へと移行していくのが一番ですから」という考えだという。

 こういった本好きを育てたいという気持ちは、いわば書店を通して行なう社会貢献だと佐藤さんは語る。

 「イセザキ書房は55年間ここで書店をやってきましたが、このことは一つの社会的意義があり、地域への貢献にもなっていると思います。私は、利益追求だけで商売はやっていけないと考えております。お客様のおかげを思わなくてはいけないと考えます。私も店長以下のスタッフも、読者と親しくお話しながら、商売をやらせて頂いてゆくつもりです」

 こんな意識をもって運営されている書店が街にあることは実に有益なことだ。書店の面白さとは、本来、出会いの演出にあると思う。何気なく立ち寄った書店で、偶然手にとった一冊によって、新たな知識を得る。新たな感動を得る。そういった想像もしなかった出会いが、書店に行く楽しさの原点だ。

  コンビニの書棚でも「欲しいと思っていた本」は買えるけど、こういった新たなる本との出会いはなかなかできない。そんな良質な邂逅を演出してくれる場所こそ、街の本屋さんだと思うのだ。

 今、街の書店が次々と姿を消しているという。しかし、そこには確実に人生を豊かにしてくれる出会いがあるのだ。ぜひ、「イセザキ書房」さんには、そんな書店が持つ根源的な楽しさを、これからも伝えていっていただきたいと思うのだ。

(岡部敬史)



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