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大人のブログ探訪

『やきにく南山 奮戦記―食農協働レストランへの道―』

2008/07/17

『やきにく南山 奮戦記―食農協働レストランへの道―』

 『やきにく南山 奮戦記―食農協働レストランへの道―』は、京都にある「やきにく南山」の経営者・楠本貞愛さんが綴るブログだ。今回、このブログをご紹介しようと思ったのは、そこで綴られている記事から、心地よいメッセージを感じたからだ。

 では、まずこのブログのメッセージが端的にわかるエントリー「いのちの循環の中で思うこと」から見ていこう。

「二日続けてお産があったのですから、さぞお疲れでしょう?」というと、「この母牛たちはどちらもベテランなので手はかかりません。自分で生んで、後産も自分で処理して、子牛もなめてきれいにしてくれるので、母牛に任せとけるんです」とのこと。「人間のやることは、納豆だって作れる上等の近江米の稲わらをたっぷりと敷いてあげること」ぐらいなのだそうです。

 この記事は、木下牧場という近江牛の繁殖農家を訪れたときのものだ。こちらの牧場では、ベッド代わりの稲わらから自家産の粗飼料づくりまでこだわり、心を込めた飼育をされているそうで、楠本さんはその細部一つひとつの丁寧さに驚かされたそうだ。また、離乳した子牛の肥育を担当しているのは、こちらの牧場のお嬢さんで高校3年生と中学3年生なのだが、彼女たちの仕事ぶりにも感じ入る。

 肥育を担当しているお嬢さんお二人も、最初は出荷のたびに泣いていたけれど、病気などで肥育途中に死なれることの方がよほど悲しく、無事に育った牛は「よくがんばってくれた!」と、見送れるようになったとのことでした。
 大量生産の枠組みから離れ、しっかりと命あるものに向き合って育てておられる生産者さんとつながることができるのは、わたしたちにとって最高に幸せなことです。
 人間もまた、いずれ自分の命を譲りわたすそのときが来るまで、与えられた役割を嬉々として引き受け、命の循環の中で健気な生を全うしたいものです。

 元気な牛たちと、その肥育の仕事を担当する牧場の娘さんたち。そんな彼女たちの姿を見て「健全に育っているのは牛ばかりではありませんでした」と、楠本さんは綴っている。読んでいるこちらの心まで温かくなるレポートだ。

 このように「食」の現場に赴き、真摯な生産者との交流に心を躍らせる楠本さんが綴る記事のなかには、「食べる」ことや「肉」について、示唆に富んだ内容のものも多い。

世界的な食糧危機を前に、いつも槍玉にあがるのが「肉食」。特に日本人好みの「穀物肥育された霜降りの牛肉」は、人間の食料を奪っている大悪玉とみなされているのですから、今後、焼肉屋は、どうやって生きていけばよいのでしょう・・・。
そんな葛藤を抱え、「存在を歓迎される焼肉屋への道」を模索しているわけですが、先日、岩泉町の「いわてスローフード協会」事務局の茂木さんから「畜産の本来の理念」について教えていただくことができ、ちょっとうれしくなりました。
その方がおっしゃるには、「畜産の本来の理念は、人間が食べられない草を牛に食べさせて、人間が食べられる食糧(牛肉)をつくること」つまり、「人間の食糧と競合しない草資源から、人間の食糧となるタンパク質を得ること」なのだそうです。

(08年6月12日のエントリー「畜産の本来の理念にふれて」より)

 こういった理念は、多くの人が初めて耳にするのではないだろうか。

 僕たちは、こういった情報や理念を知ることで、食べることに意識的になれる。この「意識的になれる」ということは、とても重要だ。

 昨今の大量生産、大量消費の世の中において、多くの人々は「食」に対する意識が低すぎた。一見、些細なことに思えるこのような個々人の意識が、現在の「食」の諸問題を引き起こしたひとつの要因に思えてならない。

 そう考えると、このような情報や意見の発信は、実に有益に思えてくる。「全国の牧場や食肉加工場、家畜市場などを回り、食について何も知らなかった自身の驚きを多くの人に伝えたくてブログに書き始めました」とは楠本さんの言葉だ。

 ここで綴られる多くの生産者や「食」の現場に携わる人の声は、楠本さんにとっても新たな発見なのだが、僕たちにとっては、「真摯な食の現場」というものを、感じ取れる貴重な声でもある。

南山は、食農協働レストランを目指し、生産農家さんとの信頼関係を築いて、よりよい食材を分けていただけるようがんばっています。特に牛肉は、餌づくりからこだわり家族同様に愛情深く育ててくださる小規模な環境保全型畜産農家さんから産直で丸ごと1頭仕入れ。さまざまな部位をメニューにお出ししています。

 これは、楠本さんの経営する「南山」のホームページに掲げられたひとつの経営理念だ。こんな考えをベースに、会社を経営する彼女にとってブログを通して伝えたいメッセージとは何か――最後にこんな質問をしてみた。

 「企業に命を吹き込むのは、『人の思いのエネルギー』だと思っていますし、そのエネルギーは、企業の使命『存在意義』を追及することでしか生じないと痛感しています。焼肉屋だから分かること、焼肉屋だから得られた情報や経験など、仕事を通して得た感動を情報発信することで、存在を歓迎される焼肉屋になりたいと思っています」

 こんな気持ちで綴られる『やきにく南山 奮戦記―食農協働レストランへの道―』には、読み手をポジティブにしてくれる心地よいエネルギーに満ちている。

(岡部敬史)



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トラックバック送信日 2008/07/19 22:50:27

木下牧場です。
ありがとうございます。南山様には牛さんの気持ちをくんで頂き、生産者としてはとってもうれしい気持ちになる方です。
私は自然にしていた事がこんな形に思って頂きうれしい事です。
私の牧場も自然に牛さんも命の重さを心して育てて大事にしていこうと思います。
娘も後を継ぐ!と牛さんの勉強中です。牛だけではなく社会勉強を!と思っております。
まだまだいろんな勉強をしてまいりますのでよろしくお願いいたします。

投稿情報: 木下牧場そのちゃん | 2008/07/19 22:48:46


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